アメリカ合衆国のスーパーで、“ブルーベリー”や“クランベリー”などとジュースのパックに記載されていても、実際には、そのほとんどがリンゴの果汁だということをご存知でしたか。
その理由は、リンゴジュースが最も安価だからだそうです。そして、各メーカーには、果汁の成分について%表示をする義務はありません。これでは私たち消費者は目をくらませられてしまうでしょう。
2011年、アメリカの政府機関FDA(Food and Drug Administratio)は食品偽装に対する特別委員会を設けました。科学者、エコノミスト、法律家をメンバーに集め、偽装に関する啓発、対策の検討を行っているのです。
なかでも、摘発が最も難しいと言われているのが、海産物です。
海産食品の9割以上を海外からの輸入に頼っているアメリカ。昨年は、海洋自然保護のNGO団体、オーシャナ(Oceana)が調査したところ、市場に出回っている魚の3割が正確に表示されていないことが発覚しました。
特に、レッドスナッパーの偽装は甚だしく、約17匹に1匹の割合でしか正当に表示されていないのが現実といいます。調査によると、残りのほとんどは 甘鯛(Tilefish)やテラピアだったそうですが、水銀などを多く取り込んでいるといわれる甘鯛はFDAによっても、妊婦や子どもが控えるべき有害食品に指定されています。
有害物質が母胎から胎盤へ移行する例を示すデータとしては、911のテロ事件後に国際貿易センター周辺(2マイル;約3.2km圏内)に住む妊婦さんの血液中の水銀値が、海産物も食べていたとはいえ、異常に高くなったそうです(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3046737/)。
巨大ビルの倒壊により、資材として使われていた重金属の破片や溶けた気化物質が大気を通して妊婦さんの体内に取り込まれた可能性が指摘されたのです。
そこで私が思い出すのは、美しい海に面した町で起きた悲劇、水俣病の経緯です。
汚染された海産食品を経口摂取していた当の母親には水俣病の症状は出なかったにもかかわらず、その母胎を通して有害物を摂取した赤ちゃんたちは、この世に生まれ出たその瞬間からもがき苦しんだと伝えられています(参照『よかたい先生~水俣から世界を見続けた医師 原田正純~』)。
食品、薬、空気、水を含め、妊産婦さんが摂取するものと赤ちゃんとの密接な関係は明らかです。
へその緒を通してこんなにも深く母子は繋がっているんですね。
ところが、妊娠中、最も気をつけなければならないと言われる時期は、本人も妊娠しているとは気づいていない妊娠のごく初期です。
実際、その時期に胎児の発育のために栄養バランスに富んだ安全な食生活ができている方は、とても少ないと、妊婦さんと接してきて実感しています。
いつ身ごもってもよいように、毎日の食生活を大切にしてほしい。
同時に、水俣病のような悲しい歴史を未来の教科書として、これからの私たちは今、子どもたちに起こっている被害を、地球規模に置き換えて考えていかなくてはならないと感じています。