第29回 ドゥーラの役割とは?

娘とレオくん

お正月休みはフランクフルト郊外に住むドイツ人の友人宅へ行った。

スキーよりやっぱりまだソリのほうがいいという娘とレオくん

振り返ると、2007年に、SDN(スコティッシュ・ドゥーラ・ネットワーク)認定のバースドゥーラの資格を取得。以来、私もドゥーラとして実際のお産に立ち会う機会が増えてきた。

ドゥーラだからこそ足を踏み入れることのできる聖域で、感動と気づきの連続に、

「生きててよかったぁー!」

の気持ちで日々どこまでも満たされきっている。 

一方、院を卒業後も、学会や勉強会に毎月のように出席しているので、生活は多忙を極めている。

先週も、ホームバース・カンファレンスのため仲間の助産師とドゥーラと一緒に6時間かけてシェフィールドまで泊まりがけで行ってきた。

そんな慌しい毎日で、なかなかパソコンに向う時間もとれないまま、気がつくと最後の連載アップから半年以上もたってしまった。 

ところで、ドゥーラについて知っている方は日本にどのくらいいるのだろう? 

いったい何をする人〜? 

と日本人の方によく聞かれる。

ドゥーラとは、もともとギリシャ語で、助ける人(女性)を意味する。

そこに「バース」が付くと、医療行為は行わないが、基本的な出産サポート訓練を受けている分娩付添人となる。

物理的に離れているせいで実際の分娩に立ち会わずに、情報だけを提供することもある。

家に上のお子さんを置いていけない場合には、産婦さんがパートナーと病院へ行っている留守を守るベビーシッター的役割を担うこともある(私はこの経験はまだないが)。

医療スタッフにはできないことをする 

手づくりの木のおもちゃや棚、お人形

シュタイナースクールで仲のいい娘のクラスメート宅。ママ手づくりの木のおもちゃや棚、お人形でいつもいっぱい

私の受けたアデラ先生創設のドゥーラ養成コースでは、実践的なサポートと並行して、産む女性へのエモーショナル・サポートについて学びを深めることに主眼をおく。

ミッドワイフ(助産師)としてお産をサポートしてきた経験のあるアデラ先生は、「ポジティブ・ペイン(直訳すると前向きな産みの痛み)」を出版しているほか、現在は出産に関わるコラムなども数多く執筆している。

それらのなかで一貫して彼女の強調しているのは、医療スタッフと産みゆく女性がより絆を深めることができ、安心してお産にのぞめるよう、ドゥーラとは、妊娠―出産―産後を見守る「非医療スタッフ」としての立場を明らかにしなくてはならないということである。Les doulasAmazon(アマゾン)3,270〜4,032円

アデラ・ストックトン著 ‘Birth Space, Safe Place’フィンドホーン出版もお勧め

クッション役がいるから、助産師さんも安心 

第3セクターであるドゥーラがいることで、産む側(たいていの場合、産婦さん本人とパートナー)と医療スタッフとの間にワンクッションおくこともできる。

二者対立構造に陥りにくく、産む側は無用に感情的にならずに済むとも述べている。

自分の受け持ちの妊婦さんについて話す時に、「彼女、ドゥーラをつけるらしいから安心できるわ。」とミッドワイフ(助産師)が話すのを私自身も何回か聞いた。 

ドゥーラがいる方が、すべてにおいて事がスムーズに運ぶのだと言う。

ドゥーラのいるお産と、いないお産の違いを誰よりもハッキリと肌で感じているのは、どうやらミッドワイフ(助産師)たちのよう。

分娩の所要時間が2時間も短縮された 

お産の現場に漂いがちな緊張感によって、いつのまにか曖昧になりがちな産婦さんの希望を成就すべく全身全霊で尽くす。

これは、「医療スタッフであってはなかなかできないことである」、そうネピア看護大学の助産学のネッサ マキュー先生(助産師)も熱をこめて話される。 

エジンバラ大学で教鞭をとるローズマリー・マンダー教授(助産師)も、著書のなかで、家族以外のバースパートナーの筆頭にドゥーラを挙げている。 

さらには、ドゥーラの付き添うお産とそうでないお産について、たとえば、 

・分娩の所要時間が平均で2時間ほど短縮される
・帝王切開率が50%下がる
・会陰切開率および産後うつに罹る率が激減する

など、さまざまな調査結果を、ミッドワイフ(助産師)とバースティーチャーを対象とした勉強会で紹介されていた。
(→続く)

春の風を葉いっぱいに吸い込んだ木々
木々が春の風を葉っぱいっぱい吸い込んで、ますます深い緑になって娘の学校のシュタイナースクールの校庭にて



次号に続く→

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お読み下さりありがとうございました。

ノマドなドゥーラが運営するノマドゥーラ ウェルネスで

ケアを提供しているLOVEドゥーラAkikoの公式サイト

↓ 

https://nomadoula.com/pcbo/

ちなみに↓今住んでいるフランスからお産体験の振り返りについて、ちょっと偉そうにYouTube動画撮りました(すみません)。動画編集してくれているのは、この時の娘っ子です。今度のお誕生日で17歳!❤️宜しければチャンネル登録してご視聴くださると嬉しいです♪

Recipes for Normal Birth(正常産のレシピ)

この写真が、赤とピンク、2色のフェルトで縫ったハンドメイド‘命の道’です。
この写真が、赤とピンク、2色のフェルトで縫ったハンドメイド‘命の道’です。

少し前に、ここロンドン南西部でSara Wickhamさん(http://www.sarawickham.com/tag/induction/)の勉強会に参加してきました。

Saraさんはイギリスだけでなく世界的に注目されている助産師さんで、単独でデータを収集し徹底的に検証するというそのインディペンデントな姿勢は本当に素晴らしいです。嬉しかったのは、12年くらい前にエジンバラ市内の看護大学で行われた数回の公開講座に出席(看護学生でない私のようなドゥーラも多く出席していました)していた私のことを覚えていて下さったことです。単に日本人は珍しかったのでしょうが、生徒一人一人に目を配る温かさを感じました。

ともかく、先日のロンドンでの勉強会は充実していて、そのタイトル、Recipes for Normal Birthも気軽に学べそうな魅力にあふれています。美味しいご飯のレシピが欲しいように、誰だって正常産のレシピって?と覗いてみたくなりますよね。サラさんにRecipes for Normal Birthを広めることになったきっかけを伺ってみました(文末の英文も参照)。

「世の中には様々なたぐいのお料理本や、‘これは効く!’という処方箋や、指南書などが出まわっていますが、すべての人にぴったり当てはまる一冊なんて存在しません。お産においても同じこと。一律に行うルーチン介入という考え方は、すべての女性にフィットするはずがないのです。これからはルーチンという発想から身を遠ざけ、前向きな気持ちで、より現実的になっていくことが求められているのです。つまり、助産師として、助産学生として、医師として、ドゥーラとして、産前教育者として、そしてその他多くの周産期母子ケアに関わるケアの提供者として、一人一人に考えてみてもらいたいのです。‘一体、何が自分の力でコントロールできる範囲のものであるのか。そして、どうやってもコントロールできないものは一体何なのか?’ということを。たとえ思ったように進まないシナリオに出くわしても、そこで乗り越えていけるだけの基本的材料(basic ingredients)を確認しておきましょう。想定外への対処法や、思わぬ必要性に備えて用意しておきたいリソースの詰まった袋(a kitbag of resource)は、お産に関わるすべての人がそれぞれに持っておきたい大切なレシピです」といった風に、お産の過程とお料理のイメージを重ね合わせています。確かに、Saraさんの仰るポイントは分かります。妊娠中から自分なりのレシピを整えておくことの大切さは、母子ケアに携わるケアギバーばかりではなく、実は妊婦さんにこそ意識してもらいたいなと思います。

妊婦さんの場合には、さまざまなことを冷静に想定しながらも、感覚的なものを総動員して、さまざまなレシピの中から自分のレシピを選ぶ。例えば、住んでいる場所、その時の赤ちゃんの様子、自分の体調や、もともとの体質、環境や周囲のサポートなど、その時の状況から総合的に判断して、‘これが今ある自分の持ち札の中で最善の選択であろう’と思えるものを選び、そこで最も必要なものは何かについて考える。つまり、何が自分の求めるもので、自分にとってそれは本当に必要なことかを見極めていく、といくわけです。

‘レシピ’という言葉がぴったりなほどにいろいろな要素がよくも悪くも盛りだくさんな今のお産。自分なりに真剣に学び、選択していくことが、産後の納得感やその後の充実した子育てにつながっていくとても大事なプロセスだと感じます。そして、シンプル イズ ベスト。お料理の場合も、原材料にこだわったシンプルなものほど美味しいことを忘れてはなりません。

脱線しましたが、Saraさんの勉強会では、赤いフェルトを使って‘命の道’を縫う手芸コーナーなどもあって、美味しいランチとともにとても充実した勉強会でした。お産が進まない時に、トイレにこもって便座に座ったりすることは知られていますが、その際に、アロマオイルを便器の中に数滴垂らすと効果的といった使い方や、分娩中の姿勢といった実用的な知恵や知識もこの日はいろいろと学びましたが、ドゥーラの私があらためて確認した何よりも得難いものは、ドゥーラの役割の根幹をなす‘お産においてただ純粋に寄り添う’ということの意味についてです。

妊産婦さんと一緒に過ごす。椅子に座っているだけでもいい。産婦さんの傍らでチクチク裁縫をしたり、陣痛中に編み物をしているだけでもいい。その存在がどれほどの力となり、実際のお産によいインパクトを与えるかについて、Saraさんはシステマティックに、また明快に説明し、会場のドゥーラたちを何度もハッとさせました。

彼女のオフィシャルサイトには、たくさんの論文が惜しげもなくアップされていて、人工オキシトシンを分娩中に使用する母子への影響について分かりやすくまとめられた論文

( http://www.sarawickham.com/wp-content/uploads/2015/07/05-2015-01-Synthetic-Oxytocin-looking-beyond-the-benefits.pdf )

なども読めます。産むかもしれない方には出来るだけたくさん眼を通しておいて頂きたいと願ってやまないものばかりです。「いくらでもダウンロードして使って下さい」とSaraさんご本人も薦めていらっしゃるので、オフィシャルサイトからこの機会にみなさんも無料でいっぱい学ばれてみてください。

Recipes for Normal Birth by Sara Wickham

I think we need to move away from thinking that routine practices are the answer, and to stay positive by getting realistic about what we – as midwives, student midwives, doctors, doulas, childbirth educators or other birth workers – can and cannot control.  We need to understand the basic ingredients, know how to adapt them when things aren’t going to plan, and have a kitbag of resources to draw upon when something a bit extra is needed.