お産のシェアリングの多様性

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<母カフェのトモコさん宅から見えるエッフェル塔越しのモンマルトルの丘。絶景でおしゃべりもさらに弾む♪>

今回のブログは、お産体験のシェアリングの多様性についてです。抽象的な文章で、分かりにくい部分が多く申し訳ありません。というのも私自身も未熟で、自分でも丁寧に感じていきたいと日々考えているフィールドなので、どうしてもうまく言葉にまとまらないのです。感じているままに書きますが、不明瞭な点があったらお許しください。

自分自身のこれまで満たされなかった想いに気づいたり、過去と向き合えたりするということも含めて、お産体験を丁寧に振りかえることは、勇気のいることであると同時に、聴く側にとっても、そして話す側にとっても、大きな収穫を与えてくれるものです。女性たちが定期的に集まり、お相手のどんな話であっても、お互いを責めない、批判しない、尊重するという暗黙のルールを守った、いわゆる‘場’の整った状態では、究極的に相手も自分も‘ひとつ’。すべては‘ひとつ’、という感性が自然と引き出されていきます。そんな時空間で様々なケースのお産談に傾聴していくこと自体が特別な作用を全体にもたらします。

ただ、辛いお産だった方が出産体験談を一方的にシェアするとなると、あなたがもしもピアグループの主催者の場合、これから産むプレママにとって、恐怖体験を聴くことによって妊婦さんの不安感を増し、その影響が本番のお産に現れてしまうのでは?と主催者側特有の配慮が湧きあがってきませんか。

UKにいた頃、現地ママたちの集まるランチ会に参加したところ、あるイギリス人ママさんが自分のお産体験を長時間話しました。黙って自分の話を聞いてほしい、封じ込めておいた無念さや悲しさを周囲にぶちまけずにはおられない、そんな勢いを参加者はみな感じたことでしょう。自然に私の腕が伸びてしまって、彼女を抱きしめているうちに私まで涙がとめどもなく流れて、痛みを少しでも共感したいと思いました。後日、彼女からメールを頂き、とても癒されたと書かれていました。ただランチ会でしたから、他の方は食べ物もその後喉に通らず、空気が落ち着くまでに時間が相当かかったことを思えば、妊婦さんのいない席であって本当によかったと思います。こういう経験をすると、当然、聴き手(プレママさん)を想い、どういう形で会を開こうか、オーガナイザーとしては躊躇してしまうことがあって当然ですよね。

ところが前号でも紹介したポジティブバース(PBM)や、しあわせバース@パリにおいては、たとえ緊急帝王切開となり、産後も長時間母子別室だったようなケースでも、本人の捉え方次第でポジティブなお産に当てはまります。逆に、周囲から安産と言われた方でも、「あれはひどかった」、「傷ついた。。。」という体験をされた方もたくさんいます。そもそも、ネガティブな部分が微塵もない出産体験なんて存在しませんよね。しんどい部分があらかじめ織り込まれているからこそ、お産は実りある豊かな人生経験になる、そんな目線で語れる会だからこそ、その時のしんどさや、こころの傷をバネにした先輩ママからの生きた提言が妊婦さんの胸に響くのだと思います。

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<ドゥーラケアさせて頂いたママの赤ちゃんのつぶらな瞳がいとおしい~!>

「自分の体験が悲惨だったので、これまで何年もネガティブな気持ちしかお産に対してなかったけど、まわりや自分の子どもには、そして孫には、自分の味わった怖い体験だけではなく、しあわせなお産も実は世の中にたくさん存在するということを知って欲しい」と感じられたり、「辛かったけど、あの時の自分にはああいうお産がどうしても必要だったんだ」と腑に落ちたり、納得されたりする様子に、‘お産のふりかえり’はまるでマジックのようだと思う時があります。次元が変わると言ったらよいのでしょうか。

もちろんバイアスはあると思います。つまり、そもそも私のまわりにいらっしゃる女性たちは前向きな方々が多いというのはあるかもしれません。でも、参加者を思いやる場を設定した会やプライベートセッションでは、辛い体験談を初めて打ち明けて下さる当人にも、何かヒーリングのようなものが起こることが結構あるのです。

誰しも、日常から離れ、安心できるコミュニティーが自分にあったら、私たちは自分のことについて今感じていることや、これまでに感じてきたこと、抱いていた期待、絶望感、押し寄せる不安、希望について、よりありのままに話せますよね。それはたぶん、とても特別な機会だと思います。本人にとって、そんな特別な場でお産を振り返る時に生まれる感情だからこそ、自分にとって未知なものであったり、自然と癒しに満ちたものであったり、新たな気づきであったりするのかなぁと思います。

とはいえ、それも本当に人それぞれで、『私は何も感じなかった』と感じる方もいるのでしょうから、私が‘お産のふりかえり’について、こうしてブログで言葉にしてみるのはとても軽薄な気がしてしまいます。

でも、、、

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<螺旋階段フェチです。どこで撮ったかも忘れてしまいましたが見とれてしまいます~>

たぶん、私たちには誰しもまわりの喜びや幸せに共感したいという質が備わっているのでしょう。もちろん、お互いの悲しみや苦しみに対してだって、人として共感はできるのですが、本来、喜びやしあわせに共感するほうが、はるかに簡単で、もっとずっと大きなエネルギーをもらえると私たちの無意識は知っています。相手の喜びや、誠実さに対して非常に高い共鳴力を持っている私たちが、愛と思いやりに満ちた場で、パソコンの画面や電話を通じてではなく、目の前に座った相手の喜びのバイブレーションをじかに受け取る時、それは私たちがどんな立場におかれていても、大きな糧になります。

と、こんな書き方をすると、「よく周囲を妬ましく思う自分」を長年自覚してきたような方は、ひょっとして「そんな共感能力は自分にはない」と感じるかもしれません。でも、お産に限らず、何かについて、真剣にシェアするということはとてつもなく大きなエネルギーの交換です。お互いにとって、必要なエネルギーが交差したり混ざり合ったりして、最終的にはちゃんとおさまるべきところに沁み込んでいくのは、しっかり感じられるかと思います。

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<美しすぎるフィボナッチ係数に植物園でも遭遇。なぜこんなに完璧なのでしょう>

時には、お産でさまざまな体験をされた方、例えば赤ちゃんを死産で失ったママさんからの言葉が、妊婦さんのこころの滋養となることもあります。絶望の淵から這い上がってこられた方の培ってきた命への誠実さ、強さに触れ、妊婦さんは信じられないほどの力を頂くからです。普通に生活をしていたら決して出会うことのない試練を味わわれた方が会に参加して下さり、そのプロセスを周囲と分かち合う時、個を超えたエンパワメントが起こります。辛い体験があったからこそ、その方は誰よりも周囲のお母さん方の安産を願って日々語っているのだと肌で感じられます。

実は、私の子を取り上げて下さった助産師さんも、そうでした。15年前、一人目を身籠っていた私は、彼女から自らの死産による過去の壮絶な苦しみを聴き、一体どれほど妊婦として‘今この瞬間’を大事に生きることについて多くのことを学ばせて頂いたことでしょう。偶然にも二人目のお産を介助して下さった助産師さんにも死産の経験がおありでした。お二人とも素晴らしい先輩ママとして、惜しげもなくたくさんのことを授けて下さったのです。今の自分があるのは、天に召された彼女たちの赤ちゃんの導きだと思います。

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<2017に完成した「セーヌ・ミュージカル」と呼ばれるセガン島のコンサートホール周辺を息子と散策。設計は日本人建築家坂茂氏ですが、こちらも不思議な、でもどこか懐かしい形状>

細かい心配は日々尽きませんが、未来について不安でいっぱいだということは、今をそれだけ真剣に生きなさいというメッセージだと私はいつも思います。変えることのできない過去の一点や現状を憂えるよりも、本当の自分は、そこを乗り越えて、より心地よい自分になっていたいはず。だからこそ、特に妊婦さんは余計なところにあまりフォーカスし過ぎず、今この瞬間、喜びに満ちた自分になる!という一点から視点をずらさないでいて欲しいなぁと思います。

最後に、ちょっと変な書き方しますね。女性たちとシェアリングしていると、おしっこの話とか、うんちの話とか、それはもうなんでも出てくるんです。心身の緊張をほどいて、ゲラゲラ笑いながら、ぽろぽろ泣きながらお母さんたちが体験談をシェアし合っている時、私には地球レベルで‘お産’が笑っているなぁと感じるんです。‘お産’が完全に擬人化されているんです私の中では(笑)。ガイアとか、パチャママとか、マリアとか、観音とか、アルテミスとか、いろいろなイメージが次から次へと湧いてきますが、とにかく、‘個’を超越した大きな何かが、私たちを包み込み、その中で安全に他者と、そして、自分自身とコミュニケーションさせてくれているように感じます。

すみません、話が飛躍し過ぎました。ともかく、妊婦さん、特に初産の方にとって、実際に会って先輩ママさんの話を聞いたり、お産に向けての不安を聞いてもらえるピアな会に参加することは大切だと何度でも伝えたいです。

日本でも、お近くに助産師さんやドゥーラの導くグループがないか調べてみてはいかがでしょう。東京・横浜近辺であれば、Umiのいえ(http://www.uminoie.org/)をおすすめします。2018年7月30日(月)の夕方からUmiのいえで開催される「お産道場」で‘人として大切にされるお産とは’をテーマに私もゲストトークさせて頂くのですが、そのような時空間で、あたたかいお産のイメージを全身にプリンティングし合ってほしいなぁと思います。

イベントの詳細はこちらです。是非ぜひご参加ください。

【お産道場 お産の寄り添い「人として大切にされるお産とは」を考える】

日時2018730(月曜日) 19:0021:00 18:30開場 終了後22時までフリータイム 

会場 NPO法人Umiのいえ  http://www.uminoie.org/
参加費 3500+税  (お夜食におむすびをご用意しております。)
ゲスト 木村章鼓
お申し込みはこちら: https://coubic.com/uminoie/150119

 世界に広がるドゥーラの輪〜ドゥーラからの国際便〜 

日時 : 2018 712 (木曜日)
9:00
より受付開始 終了12:00
場所都内
会費 : 4000
お茶&お菓子付き 先着 30

託児はありませんが、お子様連れ大歓迎です!

申し込み方法:
こちらまでメールをお願いします。
doulashipjapan(@)
gmail.com
(@)
@に変えて送ってください。お申し込みをしてくださった方に詳しい場所、スケジュール、お支払い方法など送ります。ドゥーラシップジャパンhp

https://www.facebook.com/events/2144434235785374/permalink/2144439339118197/

<7月12日(木)スケジュール>
9:00 開場
9:15 挨拶
9:20 木村章鼓 講演
10:00宇津澤紀子 講演
10:30 休憩
10:40 パネルディスカッション
11:40 挨拶
12:00 終了

~木村章鼓よりみなさまへメッセージ~
私自身の辿ってきたドゥーラジャーニーをお話します。女性が母親に移り変わっていく姿を見守るドゥーラ。それぞれのフェーズ移行がスムーズにいくよう継ぎ目を大事に寄り添うためのリチュアルもお伝えします

~宇津澤紀子よりみなさまへメッセージ~
狭いながらも私が知り合ったアメリカのドゥーラや助産師たちのこと、在米日本人の産後事情、などをお話ししながらマッサージやストレッチなど妊娠中から産後まで私が使っている手技をシェアしたいと思います

~質問大募集!~
木村と宇津澤に質問があれば事前にドゥーラシップのメールまでお寄せください。できる限り会場でお答えできるようにします。

 慶應義塾大学 公開講座 <患者学> ゲスト講演 木村章鼓 

日時 : 2018 87 (火曜日)
場所慶應義塾大学 信濃町キャンパス考養舎
参加費 無料
申し込み不要

いつもまとまりのない拙いブログを最後までお読み下さり本当にどうも有難うございます。ますますしあわせなお産がこの世に増えていきますように。

木村章鼓

バースセンター見学を通して考えた助産師さんのストライキ

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今回はロンドン南エリアの大学病院West Middlesex (website WestMidmaternity.org.uk) 病院内の産科、Queen Mary Maternity Unitとそのケアについて紹介します。長年地元でベテラン助産師として病院出産、バースセンター出産、自宅出産に深く関わってきたPo-Ying Li先生にお話を伺いました。現在、NHS(UKの国民保健サービス)では、テムズ河エリアに点在している産科病棟9つのうち4つを閉鎖して5カ所に減らす動きがあるそうです。

幸いなことにWest Middlesex病院の産科は今後も存続し続けますが、周辺から妊婦さんが産み場を求めて駆け込んでくることが予想されるため、今後は年間500件のお産の増加を見越して、助産師の数も増やす方向です。現状では、大学病院勤務、バースセンター勤務、コミュニティー勤務(地域の各家庭へ訪問)の数をすべて合わせると150―180名ほどの助産師がこの大学病院を通して妊産婦さんのケアを行っていますが、「ただでさえ低賃金で頑張っている助産師はますます忙しくなってバーンアウトしていく人も現れるのでは、、、」と懸念する声もあります。

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West Middlesex病院内のバースセンターの分娩室と助産師のPo-Ying Li先生

ましてや、このWest Middlesex病院では昨年、助産師たちによる賃上げストライキがあったばかりです。私も助産師応援団の一人として旗を振り、何回かこの時のストライキにも参加しましたが、「Enough is enough!(もう限界!)」というスローガンを掲げ、傘もささずに厳寒の朝から街頭デモをする彼女たちの濡れそぼったコート姿は忘れられません。英国助産師会(the Royal College of Midwives RCM.org.uk)が指揮をとり、助産師が一丸となって全英で数回に渡って展開したこの時の訴えは全面的に国に認められましたが、過去3年もの間、給料アップせず、インフレ率は彼女たちの給料上昇率を上回り、助産師の中にはフードバンク(食糧を配給する国の社会福祉サービス)を利用しなければならない人も一時はいたそうです。

West Middlesex病院内のバースプールの様子、産綱も天井から垂れています
West Middlesex病院内のバースプールの様子、産綱も天井から垂れています

さて、この病院の施設を見てみましょう。入ってすぐのブッキングエリア(受付)はかなり混んでいます。さまざまな人種の女性たちがソファーに座って順番のくるのを待っています。妊娠中のデイアセスメント(検尿・ウルトラサウンドなど)を行う産科・婦人科エリアと、実際のお産が行われる病棟はいくつかの扉と大きな廊下で仕切られており、一般的な日本の総合病院と同じようなつくりです。

大きな違いは、バースセンターの存在です。病院施設に併設というより、廊下の延長で続いているバースセンター内では助産師に主導権があります。侵襲的な医療介入をできるだけ減らし、母子の健康と安全を目指した助産理念のもと、当然のことながら、自然分娩率は高くなります。産後の完全母乳育児率も同様です。さらにWest Middlesex病院では、広々とした4部屋(4床とも水中出産可能)に加え、誕生死(Stillbirth:赤ちゃんをお産で失うケース)といったトラブルに遭った方のみ利用できるファミリールームが2部屋あるのです。

誕生死などトラブルに遭った家族が休む部屋の壁には額縁と並んでTVも
誕生死などトラブルに遭った家族が休む部屋の壁には額縁と並んでTVも

あたたかい雰囲気の絵や刺繍のクッションが他の部屋とは違うやわらかい空気感を漂わせています。壁のテレビは、バースセンター内で唯一、このふたつの部屋にしか無い備品ですが、苦しい時にわずかでも気が紛れれば、と備え付けられたそうです。私もドゥーラとして日ごろ感じていることですが、誕生死の方は、本当にサポートが必要です。「赤ちゃんの死というとてつもなく深い悲しみと傷を負った心身を少しでも癒してもらえれば」と語るスタッフの助産師は皆さんほんとうにあたたかい笑顔の働き者です。

病院勤務の助産師とバースセンター勤務の助産師は、同じ建物の中で住み分けているわけですが、バースセンター勤務の助産師のほうが、対応に余裕があるというか、明るい笑顔の方が多いように感じます。権限をもつということは、大きな責任を担っている。それだけ負担も大きいでしょうが、別の見方をすれば、自信をもって生き生きと仕事と向き合っているとも言えるのかな、と思うのは私だけでしょうか。

そういった助産師の中には、私が地元のドゥーラ仲間と開いているPositive Birth の会にも非番の時間帯に応援で顔を出したり、ボランティアでお手伝いをして下さる方々もいます。

ここであらためて繰り返すまでもないことですが、私は、バースセンターで日夜頑張っている助産師や自宅出産をサポートしているコミュニティー助産師を応援しています。母子の健康のために少しでも力になりたいという熱い志をもった彼らがストライキを行わなければならないなんて悲しいことです。でも、時には敢行しなければならないこともあるでしょう。そんな時にはこれからも立ち上がって彼女たちを精一杯応援したいと思っています。

以下の写真は、お世話になった病院・バースセンターのスタッフに宛ててお母さん方が退院後に送ってきたというお礼状を集めたボードです。日々これらの文章に励まされながらスタッフの皆さんは何とか頑張っているということです。皆さんもお世話になった病院や地域のクリニックにお礼やフィードバックを送ってみませんか。

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