家探しと産み場探し

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引越しから2週間がたちます。まだ10箱ほど開梱しなければならない段ボールが山積みになっていますが、新しい街、新しい空間にゆっくり馴染んできています。

9月に入り一層肌寒くなってきました。
ヒューストンからロンドンへ移り住み、新しい家、新しい生活、新しい人間関係にようやく馴染んできました。
この短い間にも、私の住む街Twickenhamで、子どもたちの学校や古い友人関係を通じて、病院勤務の助産師さん、開業助産師さん、看護学生、小児科医、そしてドゥーラとの出会いに恵まれてきました。
集めたい情報やつながりたいネットワークがハッキリしているせいか、出会うべき人にピンポイントで廻りあわせて頂いているという感覚です。

一方で、引っ越しの作業中に左手を負傷してしまい、
しばらくの間パソコンひとつ打てなかったり、
UKでの久しぶりの運転にまごついたりと不便さも味わっています。
今までは子どもたちの登校にスクールバスを利用していたのですが、
今のシュタイナースクールでは私たちのエリアにはそのサービスがありません。
送り迎えの運転が毎日大変で、あぁ今まで自分はずいぶん楽な生活を送らせてもらっていたんだなぁと、失ってみてはじめて、その恩恵に気づいてハッとすることもあります。

でも、そんな中でも幼い子どもの順応力は高く、我が子らも新しい学校にすっかり慣れて、
「家に帰りたくない!」ほど楽しそうにしているのを見ると、
とりあえずは万事OKかなぁと思えます。

私たちの家は駅の近くのオンボロ家。
ヒースローが近いので飛行機はぶんぶん飛んでいるし、列車の音もかなりします。
学校やロンドン中心地へのアクセス、夫の会社との距離を考えるとベストではあるけれど、ちょっと不安な気持ちで最初に見学に来て、「住めるかなぁ」とイメージしたとき、パーッと生活している様子が浮かんできました。
他の家では感じられなかった感覚でした。
その時、「あ、ここに住むことになるのかも」と思いました。

でも一番の決め手となったのは、
宿に滞在しながら10件ほど候補地を見学した後のことでした。
「どうしようかなー」と思いながらデータを見返していたのですが、この家のデータを開けた途端、パソコンのキーボードの上に小さな小さな白い羽が一枚だけ舞い降りたのです。
「一体どこから?」と思わず上を見上げ、
「この部屋の寝具は羽毛布団だったかなー?」と思ったりしつつも、
同時にどこか直観のようなものが働き「ここなんだ」と思ったのです。

そのあとはトントン拍子でした。
国を越えての引っ越し、ドゥーラ活動、出産子育て、頭だけでは片付かないことばかりで、今までも直観に頼ることの多かった私ですが、そこには不思議と深い納得感もあるんです。
自分の直観を大切にするということは、そこで起きることや結果を引き受けて生きていけるということのような気がします。

私が女性に「直観(直感)を大切に」というメッセージをくりかえし伝えているのは、ストレッチ体操なしでいきなり筋肉を伸ばしても思ったようにからだを使いこなせないように、いきなり今日から直観をキャッチしてそこからの情報を活かせるわけではないと思うからです。
毎日少しずつでも確実に、自分の内側の声や感覚をひろう努力をしていくことはとても大事なことです。
特に妊婦さんやこれから産むかもしれないという方々には、ありとあらゆる方面から自分を大切にして、あたためて、自分が本当は知っていること、実は欲していること、言葉にはならない想いに気づいてあげられるようになってほしいなぁと思います。

今回の触媒となった1㎝にも満たない小さな白い鳥の羽、
きれいに洗って飾り箱の中に大切にしまいました。
「与えられた選択肢や、限られた条件のなかで、自分にとって妥協できるもの、できるだけ心地のよいものを求める家探しは、ある意味、産み場探しとよく似ている」、
そんなことを言っていたカナダ人の友人の言葉が今あらためて胸に響きます。

ミクロとマクロの視点

~見えないものが見えるものになるまで~

今年の初め、ハワイでキラウェア火山を拝んできました。
この火山の化身は、ペレという名の美しい女神だと言われています。

夜、溶出するマグマをじーっと眺めていたら、
真っ赤な長髪を優雅に揺さぶるペレの姿が立ち上がってきました。
そして、自分もじーっと彼女に見返されている、
そんなお互いに見つめ合っているイメージが湧いてきました。

と言っても、マグマを見る前に訪れた展望台に併設されている資料館で、
ペレのそんな姿がモティーフとなった絵が展示されていたので、
私の想像力もきっと高まっていたのでしょう。

もうひとつ、生まれて初めて、流出しつつあるマグマを目撃して、
その視覚的な刺激によって私の中に喚起されたのは、
実際に地表にマグマとして表出するまでの途方もないプロセスへの畏怖の念でした。

なるほど。。。こうやって目に見えるものになるまでには、
マントルから、地殻にあがってくるだけのエネルギーの波動があったんだなぁ。

私たちの目には見えない、感じることもできない膨大なエネルギーが、
長い長い年月を経て、変化し、発熱し、振動して、互いに影響を与え合ってきた結果、
今この瞬間、私たちにマグマという形の天体レベルの現象として知覚されている。

そんな、言葉にしてしまうと当たり前のことが、
うごめくマグマを生まれて初めて見た瞬間、自分を貫きました。

地球の流血さながらの火山。ペレをペレとして躍動させている背後には、
地球奥深くに宿る彼女の先祖たち、つまりエネルギーの蓄積と、
その累々とした営みがあったという事実にただ圧倒されました。

大げさかもしれませんが、地殻を目指し、
突き破るまでのプロセスを想うと、気が遠くなります。
目の前に見えていることの根っこには、
見えないことが層のように積み重なっているということへの畏敬の念が同時に湧いてきました。

映画でも、インターネットでも、本でも、
欲しい情報を余すことなく手に入れられる時代ですが、
やはり、命が震えるような何かを直接体感するということは、とても大事なことです。
そこで手に入れるものは自分らしさや価値観を創る養分となります。

お産でも、同じことが言えるかもしれません。
個人レベルでは、赤ちゃんという命を新たに地表に出現させる行為によって、
母となった女性は自分が何者であるか、気づくのでしょう。

また、今の自分の眼には見えないだけで、
綿々と自分の内側に流れてきた命の系譜の余波に
‘タダ乗り’をさせて頂いている自分に気づくかもしれません。

ありのままに産ませてもらうことは、純粋に恩寵なのだといった、
感謝でいっぱいの境地にもなるかもしれません。

夜、眠たい眼をこする子どもたちをおんぶに抱っこして行ったハワイの展望台で、
私は女神ペレから、たくさんの想いを打ち明けてもらったような気がしています。

食のトレイサビリティー

美味しいもの、安全なもの、ますます貴重なものになってきています
美味しいもの、安全なもの、ますます貴重なものになってきています

日本では、環境省が2013年に7万人を対象に行った“エコチル調査”で、妊娠が分かったときに喫煙していた女性は全体の18%、妊娠判明後に13%は禁煙したが、残り5%は妊娠中期になっても吸い続けていたことが明らかになりました。

この結果からも分かる通り、一般的には、妊娠が分かった時点で、慌てて食生活やライフスタイルを見直すケースがほとんどのようです。

“食”は、命を創る大切な源。だから、日々の選択がとても重要。

そう頭では分かっていても、タバコや汚染された海産物ばかりではなく、遺伝子組み換え食品(GMO)など、食にまつわることで気をつけたいことが現代にはどうやら本当にたくさんあるようです。

アメリカの政府機関FDA(Food and Drug Administratio)は、現在までのところ、GMOの安全性を認めています。ですが、9割ものアメリカ人は、遺伝子組み換え食品の明確な表示を支持しています。

なぜなら、その長期的な影響が未解明にも関わらず、モンサントなどの巨大企業に独占された供給システムによって流通している大豆、テンサイ(シュガービート)、飼料用トウモロコシを含む約90%もの商品作物が、すでに遺伝子操作されているからです。

多様なオーガニック商品を揃えていることで定評があり、アメリカ全土やイギリスなどでも広く展開している大手食料品スーパーマーケットのWhole Foods Marketは、北米とカナダの店舗で販売する全てのGMOを含む商品を18年までに正式に表示すると発表しました。これは、先のまったく見えない暗闇で、光を感じる画期的な動きです。

ですが、GMO対策への抜本的な解決策は、今のところ、消費者の意識改革以外にはありません。

実はこんな文章を書いている私自身も、11年前、妊娠が分かったとたんに、週末に夫婦で飲んでいたワインを控え、ウォーキングと休息をたっぷりとり入れる生活スタイルに切り替えました。授乳後、ワインを再び飲むようになっても、できるだけ無農薬ワインを選びたいと思うようになりました。

それまでは必要とあれば服用することもあった市販の風邪薬も、ひとたび食を意識しはじめると、不思議と飲みたくなくなって、風邪のひきはじめや喉の痛みなどには、薬草やレンコンといった昔ながらの食材、ハチミツなどを今まで以上に取り入れるようになっていきました。

しかし、ハチミツを買う時にさえも、偽装表示に注意が必要だというニュースを先日目にしました。

アメリカ各地のスーパーマーケットやドラッグストアで販売されているハチミツを調査したところ、ほとんどすべての商品で花粉が完全に取り除かれていたとのこと。欧州では、ハチミツの産地を特定するために花粉を残存させることが義務となっていますが、アメリカでは規制がないのです。

FDAはウェブ上で輸入ハチミツへの注意勧告も行っていますが、我が家の食卓に並ぶものも、大気汚染やボツリヌス菌などの汚染リスクのあるハチミツかもしれません。栄養価がとても高く、免疫力アップを期待できる身近な食品であるからこそ、そんな、産地、採取方法、加工方法をめぐって不安感を持たなければならないことをハチミツが大好きな一消費者として残念に思います。

ハチミツに限らず、アメリカに限らず、今、世界中どこにあっても、何の食材であっても、トレイサビリティーを意識しなければならない時代であることを痛感しています(参照:National Geographic News)。

そんな中、自分がどのように新しい命を迎えていきたいのか。
どんなことを自分は気をつけて命を育んでいきたいのか。

そんな妊娠・出産に向けての自分なりの指針を、できるだけ早い時点で持てると、
それはとても強力なリソースになってくれると私は信じています。

食べ物選びは、ほんのひとつのきっかけ。
日々、こころとからだのアンテナを張り巡らせて、世界の大状況から学び、取捨選択をし、
『私なりの精一杯のお産』を見つけていってもらえたらと思います。