パリの第一弾

イルミネーションの美しいパリの12月。振り返るとタンクトップにサンダルで過ごした夏の終わりからわずか数カ月というのにこの寒さ。厳寒の1-2月は一体どんなものでしょう。初めて味わうパリの寒さにへこたれず、前向きに満喫していきたいです。

さて、ロンドンからパリに移り住んだ最初の数カ月間は、思えば本当にいろいろなことがありました。生まれて初めて急性膀胱炎になってしまったり、インターネット工事の予約待ちで、約2カ月ほど新居がネット未接続だったりと大変なことが多いながらも、同時に、あまりに新生活は新鮮で面白く、また、めまぐるしい程の忙しさのなか、‘こんなに楽しくていいの?’という戸惑いも手伝い、文章にまとめられずにブログ更新できないほどだったんです。

具体的には、子どもたちの新学期が9月に始まり、新しいそれぞれの学校に馴染もうと‘今’の‘ここ’を味わっているうちに、次のイベントがドカーンとおとずれ、それを噛みしめていると、また新たな驚愕があり、、、と、ひとことで言い表すなら出会いに満ちた、あるいは(ヘミングウェイの言葉を借りるなら)‘移動祝祭日’のような、もしくは、人生のご褒美を頂いているようなパリの秋でした。

もし定期的にアップしていたら、ついに赤ワインに目覚めました!とか、老舗のチョコレート屋めぐりをしてきましたとか、オペラ座でバレエを観て軽く食事をして帰宅したら真夜中になっていました、とか勢いにまかせて書いていたかもしれません。でも、、、それでは、何を食べたかとか、何を観たかの報告書になってしまっていたかもしれません。

人生のご褒美タイムを味わいたい、でも、世界中の授乳中のママさん御免なさい!!!という気持ちもどこかにありました。産前産中産後ドゥーラのくせにフランスに来て以来、毎日何をやっているんだっ、と今の自分を責める気持ちが出てくることも正直多かったのです。

それにしても、今日まで本当によくやってきたよなぁという自分へのねぎらいの言葉が素直に湧いてきます。折しも夫の勤続25周年で、ささやかな社内セレモニーがあったばかりで感慨深くなっているところなのですが(感傷的な書き方ですみません!)、この四半世紀を振り返ってみると、学生時代から海外に出ていた自分としては、外国生活に対する免疫のあるつもりでしたが、思いもよらぬ時期に思いもよらぬ国へ夫が転勤になり、家族で移動する度に、新しい土地で根を張ろうと頑張り続けることは無茶苦茶大変なことだと感じてきました。

だからといって、「自分はほんの一時の異邦人だから」と割り切った姿勢でいると、あまり面白みがありません。だからこそ、アラビア語やロシア語、マレーシア語など土地の言語に挑戦して現地の方とコミュニケーションしたいと自分なりにやってきたつもりなんです。でも、土地を去ると覚えた単語は完全に忘れてしまいました(笑)!実際にどの国での生活も毎日が気づきを与えてくれる素晴らしい体験でした。ただ、いつも最終的には別れが待っている生活。「一期一会」を胸に刻み、引っ越しのたび、お世話になった皆さんに感謝の気持ちをお伝えしてその国を去ると、こころをこめて描いてきた砂絵曼陀羅が一気に掻き消えてしまうような寂しさを感じていました。

そんな中でも、第一子の妊娠により医療人類学という学問と出会い、さらには、エジンバラ→サハリン→ヒューストン→ロンドンと移動しながら一貫して継続してきたバースドゥーラの地道な活動が軌道に乗ったことは余計に嬉しく感じられたものです。

そこにきて今回の転勤です。再び英語の通じない国に行くなんて!と、引っ越しの直前はUKのブレクジットの是非を問う選挙が開票されたばかりで気分も落ち込みがちでした。ところが今、フランスに住むようになって、本当に、自分でもまったく不可解なほど日々の生活を愛おしく思いながらパリ時間を大事に味わっています。

25年前に初めて来て以来、訪れたことは何回もあったのですが、フランスに住むことにはなぜか抵抗がありました。夫は仏系企業勤務だというのに、長期出張に同行してパリにしばらく滞在した時にも、いつか住みたいとはまったく思いませんでした。

しつこいですが、それが今では、自分でも驚くほど楽しんでいるのですから、人生は本当に不思議なものです!唯一言えることがあるなら、起きるすべてのことにはタイミングがあって、私にとっては、今がフランスを楽しむ人生の季節だということでしょうか。この人生のとある季節に「ありがとう」と純粋な気持ちで言えたらずいぶん楽になるものです。

20年くらい前に、母方の祖母が「ツキを呼ぶ魔法の言葉」(著:五日市剛)という小冊子を私にプレゼントしてくれたことがありました。いつでもどんな時でも「ありがとう」の気持ちを忘れずに、ということがその本では繰り返されていました。私がどんな国へ行っても、どんなに大変でも、曲がりなりにもこれまで楽しんで生きてこられたのは、両親、親族、友人たちはもとより、孫を常に思いやるその祖母のあたたかい想いのおかげ、また、彼女がくれた本のメッセージに励まされてきたからだと感じます。

日々「ありがとう!」と繰り返しているだけで実際にパリでも起きていることとして、何があるかなぁと挙げてみると、夏に引っ越し、まだ家も決まらずホテルに仮住まい中だというのに、連日、偶然が次々に重なって、パリで生きる素敵な日本人マダムたちにカフェやレストラン、公園、図書館などで次々と出会っています。信じられないような経歴をお持ちの魅力的な彼女達からバトンリレーのように生きた知恵が言葉を超えてどんどん伝わってきました。

いい遊覧船のナイトツアーがあるからとセーヌの河下りに誘って下さった淳子さん。エールフランス航空で何十年も世界の空を飛んでいた彼女が、夜の闇に浮かびあがるアンバリッドや、ルーブルを見上げながら、「何年住んでいても、パリを知った気にはならない。いつも新鮮な驚きを与えてくれるの」と語る時、私は自分が長年パリを知った気になっていたことをとても恥ずかしく思いました。同時に、その瞬間に自分の中のスイッチが入って、「もっと謙虚になって、今のパリを存分に楽しもう!」というモードに切り替わりました。長年のパリジェンヌ生活で彼女たちの培ってきたデータベースは、凄かった。ガイドブックにも載っていない、インターネットでも探しだせないような、口コミベースの貴重な情報や数珠のストーリーの宝庫です。

そんな新しい地元の友人、学校のママ友、同じ会社の奥さん達、そしてフランス人パリジェンヌたちにサポートされながら、また素敵に触発されながら、発見と喜びと反省に満ち、日本語でもフランス語でも英語でも、「ありがとう!」と「ごめんなさい!」(「メルシー!」と「デゾレ~!」)を交互に連発しているようなせわしない毎日です。

そのほか、週3で通っているフランス語教室(週2回文法で、最近になって会話も週1で始めました)はもちろんのこと、美術館巡り、パティスリー教室にワインの会、そして史学博士と共にパリの路を歩いて、それぞれの地区の歴史を知っていくウォーキングツアー。

連日たくさんの魅惑的なお誘いがあり、これらに参加するだけで平日、子どもたちのいない時間帯は毎日必ずなにか予定が入っていることになります。さらに子育て支援関係のお友達の活動を手伝ったり、子どもたちのそれぞれの小中学校での季節のイベントやPTA活動など、メトロの定期券を片手にパリ中あっちこっち走りまわっています。

なかでも、出産ドゥ―ラとして一番楽しんでいるのは毎週月曜にモンパルナスで行われているガスケアプローチのエクササイズのグループレッスンです。実際に続けてみて、とても効果のあるエクササイズだと思いますので紹介させてください。

日本人の助産師さん、シャラン山内由紀さんのお便りからそのまま拝借すると、フランスのペリネケアの第一人者であるベルナデット・ド・ガスケ医師は、「ペリネの保護は重力や腹圧との戦いである」と述べ、包括的な身体アプローチである「姿勢と呼吸からのド・ガスケアプローチ(通称ガスケアプローチ)」を開発、発展させてきました。身体に備わったバイオメカニクスを尊重した姿勢と呼吸からのアプローチは、ペリネ(骨盤底筋)のリハビリテーションという特殊な分野だけでなく、周産期(妊娠、出産、産褥)やスポーツ、日常生活の誤った動作などの弊害からペリネや腰背部を保護する方法として様々な分野に適応されています。正しく的確な姿勢をとることで生理的な呼吸となり、全身の筋緊張のバランスを整えたり、消化や循環といった身体全体の生理的機能を助長していくことのできるのがガスケアプローチの特徴なのだそうです。

この数ヶ月間、私もシャランさんの講座のおかげで、骨盤とぺリネを常に意識した生活を送るうちに、自分の呼吸法が確実に変わってきた気がしています。息をはき始めるタイミングで、しっかりとぺリネに意識を向け、ぺリネを労わる術が少しずつ身についてきたのかもしれません。

一緒に参加しているお仲間は、通い始めたとたん便通がいきなりよくなったと皆さん心底驚いています。心底、というのは、初回受けた日から便通がよくなり、かといって、ガスケセンターで行ったことといえば、とても楽な運動であった。そんなソフトエクササイズで、ここまでしっかり効果をあげてくれるものがこの世にあったんですねー!という驚きからのようです。

ぎっくり腰、五十肩や慢性の腰痛持ちの方、痔でお悩みの方もいらしてました。便漏れで苦しむ実母のためにガスケをパリで学んで日本に持ち帰りたい!と真剣にシャランさんの話を聴く女性もいました。妊婦さんに特化した産前クラスの他、産後のママさん(赤ちゃん同伴可)のためのグループレッスンもあり、月曜日のガスケセンターは日本人人口かなり高し、です。

ガスケアプローチと出会って心身が整ったという講師のシャランさんは、全身のラインが猫のようにしなやかで、女性としてとても魅力的なスタイルです。先日、「今の自分が一番居心地がよく、肉体的にも一番美しいと感じます」とおっしゃっているのを聴き、また、軽やかに前で手本を見せて下さるお姿に見惚れながら、大きく頷きました。本当に大学生を筆頭に4人のお子さんをもつママとは思えない軽やかな動きです。余談ですが、お声のほうは、シャンソンを歌って頂きたくなるほどのハスキーボイスです。最初、共通の知人3名(全員助産師さん!)からの紹介で、我が家に来て頂いた時、彼女の地声とは知らずに、「喉にくる風邪は辛いですよね」と失礼なことを言ってしまったというエピソードまであります(笑)。来週はクリスマスランチをご一緒するので歌って頂きたい!なんてひそかに思っています。

ということで、まだまだパリは新米の私からお勧めするのはためらわれるのですが、せっかくパリにいらしたら、そして月曜にモンパルナスにもしいらしたら、簡単な骨盤ケアはいかがでしょう。ガスケアプローチのエクササイズクラスは事前連絡無しの飛び入り参加でも大丈夫なのでその日の朝の気分で決められます。詳しい日程や場所などについてはシャランさんのブログをご覧ください(http://yyneko.at.webry.info/201708/article_2.html)。

最後になりますが、参加しているドゥーラシップジャパンのメンバーが企画して、ミニイベントが開かれます。私の年末年始の一時帰国に合わせて、東京ウィメンズプラザでのおしゃべり会です。こちらの短い東京滞在に合わせて下さり感謝です。このブログを読んで下さっている多くの方が海外にいらっしゃるかと思いますが、どうぞご友人など興味のありそうな方にもお知らせして下さいませ。

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以下、告知内容のコピペです

みなさま、

ドゥーラシップジャパン(https://www.doulashipjapan.com/)の萩野文です。

この冬、ドゥーラシップジャパンのメンバーである “旅するドゥーラ 木村章鼓” が現在お住まいのフランスから日本へちょっこし一時帰国します。

ドゥーラとして世界の様々な国でお産の付き添いやバースクラス、産後のサポートなどをしながら妊産婦さんを支え続けてきた経験豊富な章鼓さん。

そんな彼女を私たちだけで独り占めしたらもったいない!

なので、そんな章鼓さんとおしゃべりする会を設けます♥
章鼓さんのドゥーラとしての経験や想い、それから、皆さんの近況、想いを語り合えたらいいなって思っています。

日 時:2018年1月5日(金) 15:00~17:00
場 所:東京ウィメンズプラザ(予定)
会 費:1,000~1,500円程度(会場により前後するかもしれません)
その他:ウィメンズプラザが小さいお部屋なので、人数によって場所が変更になるかもしれません。お子様連れ大歓迎ですっ。

おおよその人数を把握したいので、参加をご希望の方は25日くらいまでに萩野宛(hagino298@gmail.com)にメールを頂けると嬉しいです。それ以降でもご都合のついた方はご連絡下さいませ!

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いつも拙いブログをお読みくださり本当にどうも有難うございます。

どうぞ素敵なクリスマス、年始年末をお迎え下さい!

木村章鼓

ドゥーラのリードで安産セレモニー

~出産について家族で揃い、あらためて感謝を伝える~

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あと1週間でイギリスからパリへと引っ越すドゥーラの木村章鼓です。ユーロスターでたったの数時間とはいえ、学校も変わり、言葉も変わるわけですから、ここ数カ月落ち着かない日々が続いていました。転校のための書類は思ったよりもいろいろと面倒(健康診断なども含めて煩雑)でしたが、ようやく無事に子どもたちの新しい学校が決まりました。住む場所はまだ決まっていませんっ。パリでの最初のひと月は仮住まいをしながらの家探し。よいご縁がありますように~と願っているところです。

さて、今月はこれまでお世話してきた方々とのお別れをしてきました。今日は2年ほど前に立ち合ったバルト三国出身のママ、Iさんに招待され、ご実家のお母様と一緒につくった美味しいご飯を頂いてきました。旬の野菜をふんだんに使ったIさん親子の手料理に大感動です。よちよち歩くようになったMちゃんをあやしながら、チキンと野菜のオーブン焼き、セロリとナッツのサラダ、ヨーグルトソースをからめたキュウリの和え物とビーツと呼ばれる真っ赤な砂糖大根のスープを頂きました。デザートには木イチゴやクランベリーを漬けたコンポートに焼きたてのリンゴケーキ。そして食後は、お産の時の懐かしの写真を見ながら楽しくハーブティーを飲みました。お母様の入れて下さる温かいお茶を味わいながら、『ああこれはお産の前に行ったセレモニー以来だなぁ』と私はタイムトリップしていました。

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我が家から歩いて数分のエノテカに集まり プロセッコで地元ママたちと最後の乾杯をしてきましたー。暑いからますます美味しいです~!

毎回、私はお産の前に自宅訪問をしますが、その時には可能な限り、妊婦さんの実のお母様や姉妹、義理のお母様にも来て頂くようにしています。時代が変わり、男性が積極的にお産に係わってくれるようになってきたとはいえ、やはり実際のお産や産後の生活では、女性たち同士の助け合いが大切だと感じるからです。お産の前にドゥーラのような第三者を通して、いつもとは異なるセッティングで特別な場を設けることで、今一度、お産へ向けて家族が一致団結しやすくなります。これは本当にその通りだと実感します。

ただの内輪の集まりではなく、『安産セレモニーするよ~』と、少しだけ特別感をもって妊婦さんの自宅に集まって頂き、家族が輪になって互いを見つめあうと、いつもは当たり前に思えてなかなか言葉で伝えにくかったことでも、不思議と溢れてくるのです。また、妊婦さんの中でなにか言いにくいリクエストがあれば、事前に私の方で聴きとっておきますので、あらかじめ予防線を張ることもできます。たとえば、生まれてくる赤ちゃんの世話について、また、母乳育児の方針についてあれこれ周囲から言われたくない、とか、陣痛中は敏感になっているから出来る限りそっとしておいて欲しいなどといった妊婦さんの願いは、その場を利用してご本人からご家族に伝えられるように最大限応援します。もちろん、妊婦さんが切り出すタイミングを逃してしまった時などは私がソフトに介入させて頂き、お産前に言いそびれたことがないか配慮します。本当にひとこと、こころからの『ありがとう』でもいい。お互いに感謝の気持ちを伝えあったり、これまでの道のりを振り返ってねぎらったり、これからも宜しくお願いします、と手を握りあったり。ほんのささいなことかもしれませんが、一番近い女性たちからの応援や励ましを妊婦さんは何よりも一番必要としています。

これまで、安産セレモニーに参加した妊婦さんがはらはらと涙を流し、ひと泣きした後にはすっきりとした表情に切りかわるのを見届けてきました。きっと、妊婦さんの表情がゆるみ、ああ自分はもっと甘えてもいいんだ、困ったら迷わず頼ってもいいんだ、という気持ちになれた時、お産に対する意識のギアが大きくチェンジするのでしょう。

そして、その時に感じた安らぎや、喜びが深く大きいほど、妊婦さんは自信を持って陣痛と向き合い、立派に産んでいくことができます。サポートにまわるご家族にとっても、正直な気持ちを表現できる場は大事です。娘や姉妹のお産に対する不安や恐怖感もご家族側から出てきたら、私が仲立ちとなって、妊婦さんを守りながら、ひとつひとつ聴きとって差し上げることが大事だと感じます。

冒頭のIさんとそのお母様も、『安産セレモニーをしましょう』、とこちらが提案した時に、普段はあまり仲の良くないという妹さんを招いて3人で座りました。招かれた妹さんも実はその時に妊娠初期でした。自分のお産に役立つならとIさんのお産に自分も妹として立ち会いたいと希望していました。

客観的にみて、明らかに妹さんに対して過剰に気を使っているIさんのことが私は気になったので、お産が始まってから産後の養生期に妹さんとどうつきあっていくか、いくつかのパターンを想定して、Iさんといろいろと対応を講じた結果、妹さんが立ち合いつつも、Iさんは精神的に万全の状態でお産に臨むことができました。Iさん夫婦が主役となり、助産師さんに支えられ、ドゥーラも黒子として控えており、妹にも見守られ、ご本人の心から満足のいく理想のお産となりました。

私や助産師さんと穏やかなホームウォーターバースを体験したIさん。その一部始終を見た妹さんは、お産への見方が180度変わりました。そして半年後のご自身のお産に私を雇われました。いいお産は自然と伝播しますね。今は核家族化や都市化の影響などで、子産み子育てに関する世代間の知恵の継承が減りつつあります。でも、自分の家族、姉妹のお産体験が終始心穏やかな、本人の納得感の高い出産体験であると、家族はとても前向きな影響を受けます。産後に、姉妹愛、家族愛がぐっと高まります。

同時に赦しも起きますので、家族全体で抱えていた何かが無理なく癒されていくように感じるケースもとても多いです。私が立ち合った方ではないのですが、ある方がこんな話をしてくれました。養子縁組で幼いころに親戚に引き取られ、産みの母を長らく許せなかったそうですが、産後には赦すどころか、感謝の気持ちがとめどなく溢れてきたと話していました。

その理由は、その方のお産は微弱陣痛で3日がかりでした。その間、助産師さんが親身になって話を聞いてくれたり、マッサージやお灸をしてくれたり、ご飯を作ってくれたり、本当にたくさん支えてもらって乗り越えていったということです。難産だったにもかかわらず、最終的には願っていた通りのお産になった時に、『自分はこんなにたくさんの方々の助けを得ている。みなさんのサポートやエネルギーを頂いて生かされている。命を生みだすって素晴らしいこと!』と思えたのだそうです。

すると、自分のことも、尊い命だと深く思えるようになりました。幼いころ養女に出されたという過去の一点にこだわってきた自分が恥ずかしくなり、命をこの世に産みだしてくれた産みの母に対して、伝えても伝えきれないほどの感謝の念が湧いてきました。同時に、安全に今日まで育ててきてくれた義理の両親への感謝で胸が満たされ、自分の過去をリセットすると同時に子育てのよいスタートを切ることができたのだそうです。

お産って、本当にすごいなぁと思います。冒頭のIさんにしても、これまでとはまったく違う自分に生まれ変われたと話しています。それはどんな自分なの?と尋ねたところ、『もっと強い自分、ゆるぎない自分』と答えました。私はそれを聞いて、母親ひとりひとりが、もっと強く、ゆるぎない自分になれる可能性を秘めたお産の奥深さとその神秘に、膝まづきたい気持ちになりました。

こうやって語り部としてブログなどを通して発信することで、少しでも多くの産むかもしれない方が、より自分に合った産み方を見定めたり、赤ちゃんを産みだす瞬間も自分らしくいるために今出来ることを考えるきっかけにして頂けたら幸いです。

お読みくださりありがとうございました。

ミシェル・オダン氏との再会とエフラスペース

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すっかり春めいてきましたね、お元気ですか。私は年明けから3月まで、日々吸収することばかりで、それらをまとめてアウトプットする余裕のない生活のままノンストップでドゥーラをしていました~。ハタと気づいたらもうお雛様の季節なんですね。忙しかったのは、2月末締め切りの原稿を抱えていたことも大きかったです。その原稿は東京医学社の「周産期医学」(http://www.tokyo-igakusha.co.jp/f/b/index/zc01/6/oa_table/b_z_top.html)という医学専門誌の「なぜ今メンタルヘルスなのか?」で特集となり2017年の5月号(第47巻5月号)に掲載されます。すみません発売もされていないのに宣伝してしまいましたっ。

さて、昨晩は、現在ロンドンで受講しているフランス人産科医ミシェル・オダン氏の連続12週間の講座でした。昨日は、Pre-labour caesareans and stress deprivationという題目ということで、自然な陣痛が始まらないうちに行う帝王切開によるリスクとストレスについて学んできました。特に、通常であれば赤ちゃんの血中に認められるメラトニン(ダークネスホルモン、暗闇のホルモンと呼ばれることもあるとか)について。自然な陣痛の始まらないうちに行う帝王切開によって生まれた赤ちゃんの血中にはメラトニンが皆無か、ほとんど検出できないことについて解説していたのが印象に残ります。

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メラトニン(melatonin)とは、動物、植物、微生物それぞれの生物学的な機能における体内時計(サーカディアン・リズム)として働くホルモン。さらには、強力な抗酸化物質として、私たちのDNAやミトコンドリアを保護しています。ミシェル・オダン氏は、このメラトニンのプロテクションという特性を挙げ、核DNAが守られていない状況で赤ちゃんのからだ、特に‘脳’に対してどのような影響があるかについて、お産に関わるすべての人がもっと関心を払う必要があると語りました。北欧での最近の研究データからご自身の1983年に発表されたランセット(The Lancet:医学誌)のデータまで、いろいろなEBM(科学的根拠)も引き合いに出しながら、陣痛促進剤使用のリスクと、帝王切開を行うタイミングの重要性について最後まで繰り返し強調されていました。

昨晩のオダン氏のレクチャーをひと言でまとめるなら、いかなる促進剤も使わないで、自然に陣痛が始まるのを‘待つ’ということが、ヒトにとって、とてつもなく重大だということに尽きます。若手助産師さんたちばかりではなく、私と同じくらいの世代(40代)の助産師さんたちまで一生懸命にノートにオダン氏の貴重な言葉を書きつけている姿に私は、未来への希望を感じました。

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レクチャー後の懇親の場でオダンご夫妻とお話をする機会に恵まれました。親日派で知られるオダン氏に、「ロンドンにもたくさんの日本人助産師さんが働いていらっしゃり、ドゥーラやヒプノセラピストや様々な代替医療に関わる仲間たちも一緒に月一で集まっているんですよ」と伝えたところ喜んでいらっしゃいました。また、日本で本格的に立ち上がっているドゥーラの活動母体、ドゥーラシップ ジャパン(doula ship Japan) https://japandoulaassociation.wordpress.com/ に向けてもこのような熱いメッセージを頂きました。

「発足おめでとう。日本にも必要なケアだと思います。お産はシャイホルモン、恥ずかしがり屋なホルモンの分泌を促すことが最も大事だということを大切にして、そこの部分を助ける(産む当人のプライバシーがしっかりと尊重されている時空間の創出に寄与する)役割を果たしていってください」

あたたかい氏の言葉に感動しました。。。いつお目にかかっても圧倒的な母子へのパッションと包容力があり、講演後のひとりひとりへのハグにもキスにもあたたかい氏の愛を感じます。私も今ちょっと、しばらくお風呂に入りたくない気分です(笑)。余談ですが、日本に対してずっと気になっていることがあるのだそうです。およそ1年半前、2015年の8月、順天堂大学医療看護学部母性看護・助産学のウィメンズヘルス看護学、プライマルヘルス研究会主催の第3回プライマルヘルス学会来日の直前にオダン氏は自宅で転倒されてしまい脳震とうを起こし、五反田で開かれた学会にお越しになれなかったことがありました。受け入れ側の皆さんにラストミニッツでご迷惑をかけてしまった、そのことをずっと申し訳なく思っている。。。とおっしゃっていました。

余談になりますが、実は私もその時のプライマルヘルス学会は、オダン氏は急に来日がかなわなくなったものの出席していました。東京での時間は私にとってほんのわずかな一時帰国中の時間です。氏の講演会ならスコットランド時代に看護大学などでも聞いたことがあったので、絶対に東京でオダン氏のレクチャーを聴かなくては!という訳ではなかったのですが、この時はオダン氏の講演だけでなく、ドゥーラ研究者の岸利江子さんが日本に紹介したドキュメンタリー映画「Microbirth」の上映もプログラムに入っていました。字幕スーパーを少しお手伝いさせて頂いた私としては、日本の医療者の方々、お産関係者の方々がどのようにこの映画を観て下さるのかとても興味があり参加したのです。大田康江氏によるとても興味深いパワーポイントも用意されており、映画、マイクロバースのほうも皆様真剣に観て下さり、ああやってたまたま一時帰国と重なり出席させて頂けて本当に良かった!と思っています。

昨晩、オダン氏には、ぜひお元気なうちにまた日本へ来て頂きたいですっ!と最後にお伝えしておきました。お元気そうですが今は80代後半ということで講演されることも少なくなってきたと聞きます。もしイギリス在住の方がいらしたら、4月11日までの毎週火曜日の7時からですのでいかがでしょうか。オダン氏の連続講座の詳細は会場となっているエフラスペースのサイトでご覧になって下さい。参加者全体のおよそ半数が助産師さん、残りはドゥーラや妊婦さんやバースアクティビストたちという感じです。
http://www.effraspace.co.uk/

ちなみに、2017年4月18日はThe highways to transcendence という題目でお話されますので、個人的に特にこの回は聞き逃したくないと思っております。「宇宙的、時間的な超越への高速道路(近道)」とでも言ったらよいのでしょうか。すでにオダン氏の講演は何回か聴いており、氏の本はほぼ読破しているので、何を語られるのか今から容易に想像はつくのですが、‘超越’について、ライブで伺えるのはとても貴重な体験です。今の時代、肉声で、生身の存在から受けとるダイレクトな何かって、言葉や数値では表せなくても十分に価値のある、本当に得がたいものになりましたから。

しかもこのエフラスペース、手作り感あふれるステキな空間なのです。ゆったりくつろげるソファーがあってカウンターバーがあって、ハーブティーやワインも飲める。でも一番のスペシャル感は、何といってもセレクトされたお産関係の本が買えるという点です。近所にプリンター・アンド・マーティンという名前(http://www.pinterandmartin.com/)の出版社があって、素晴らしい出産関係の本をせっせと出版しているのですが、エフラスペースはその出版社の展示スペースのようなものです。ほんとうに、‘せっせ’と思わず表現したくなるようなクラフトメーキングな書籍ばかりを出しているインディペンデント系の出版社です。

例えば、薄い冊子の「Why ◯◯is matter?」シリーズ。なぜお産には◯が必要なの?と、○の部分には、それぞれの刊の内容に応じて、‘doula’とか‘midwife’とか‘spirituality’といった言葉が入ります。どの刊もさらっと読めて、分かりやすくお産におけるそれぞれの○の重要性を理解できる構成となっています。他にも、シーラ・キッツィンガーの伝記(http://www.pinterandmartin.com/a-passion-for-birth.html)などは厚さ7-8センチのハードカバーで、こちらはかなり読みでがあります。私も15年近く前にこのシーラ・キッツィンガ―(http://www.web-reborn.com/interview/kitzinger.html)というイギリス人社会人類学者について知り、頭をガーンと殴られたような衝撃がありましたが、彼女が亡くなられた今、この本の価値はとても大きいと思います。

エフラスペースでは、常時様々なマタニティー関係の講座や、ヨーガ、産後ママの子育てグループのほか、看護学、助産学の教授による学術発表レベルの講演なども単発で行っていますし、選び抜かれた良質な書籍も手に入るのですから、ロンドンでこれから妊娠するかもしれない、産むかもしれないという方は要チェックスポットです。住宅地の真ん中に建つ、一見ひなびた地区公民館のような風情ですが、ビクトリア線のBrixton駅から私の足で7-8分です(グーグルには徒歩12分と表示されているけど)。バス37番なら徒歩1分に停留所があるので意外とアクセスはいいと思います。イメージとしては横浜のUmiのいえ(http://www.uminoie.org/p/umi.html)と似ているかもしれません。ロンドンのエフラスペースに、横浜のUmiのいえ、どちらも貴重な子産み子育てのリソースセンターですので、こういう空間が世界中にもっとたくさん増えていくようにとの願いを込めて紹介させて頂きました。