あるお母様から頂いた感想 ~ドゥーラケアについて~

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<産婦さんに教えてもらうこと。今の、ここで、生命力にゆだねる!>

20年以上前にイタリアの国営企業に就職して、月に何度もミラノやローマへ飛ぶような生活になってみて初めてメールを使いこなすようになった私ですが、当時はそれまでの生活に微塵も不便を感じていなかったので、最初のうちはインターネットの利便性が理解できず、ネットはまったく使っていませんでした。

その後のテクノロジーの加速ぶりはご覧の通り。何もかもがここまで便利な世の中になるなんて当時はまったく予想もしていませんでした。今では、ハタチまでネット知らずの環境で育つことができたことを心から有難く思うと同時に、社会人になってネットワークを広げていく時期にあわせてネットが私の人生に導入され、さまざまなことが可能になったことを振り返ると、タイミング的に信じられない程の恩恵だったように感じます。

もちろん小中学生の親として、子どもたちの日々の使用状況を巡って懸念するところも多いです。さまざまな懸念もされる今のネット社会ですが、それでも海外在住組には有難いことばかりです。例えば、私のようにドゥーラだと、妊娠中~出産~産後と長くお付き合いさせて頂いたご家族と、何年たってもどこにいても、ずっと繋がっていられることがとても有難いです。

最近も写真付きでこんな素敵なメッセージをロンドン在住の日本人ママ、おうかさんから頂きました。長文ですが、ご本人の気づきがとても尊くて、家族愛の成長を感じられる文面に私までとても嬉しくなりました。ご本人の了解を得てこちらでアップさせて頂きます。

おうか出産当日写真
<ひとつのチーム、お産は聖地>

『木村章鼓さまへ、

あらためまして、お産の時はどうもありがとうございました。今お産を振り返ると、あのお産の経験は、暖かいオレンジ色の光に包まれた、自分の両手の中にすっぽりと入るような感覚で思い出されます。

一人目をバースセンターで出産した後は、なぜか痛みをずっと鮮明に覚えていて、それがとてもひどくて、 病院の近くを通るたびに実際、お腹が痛んでいたくらいなのですが、今回は痛みの事は面白いくらいすっかり覚えていません。産後に読んだ雑誌に名古屋の吉村医院で出産した人のインタビューで、ここで産んだ人は次々と産みたくなると書いてあって、私も今回の出産以降同じように思っていたので、良い出産の経験は良い未来へと繋がるんだと思いました。そこであきこさんが、良い出産経験を増やすことが世界平和に繋がるとおっしゃっていたのが今もピンと響いています。

自分の側に絶対的な味方としてサポートしてくださる知識のあるドゥーラさんがいること。それだけでものすごく安心できたのですが、それは私の中でイギリスの医療をあまり信用できていないという事もあるのかもしれません。医療行為としてではなく人間としてのお産は本来どんなものなのだろう?という事をあきこさんのケアを通してあらためて考えられたのが本当に良かったです。

突き詰めて思うと、自分が今から産み出す赤ちゃんのことを、自分と同じように愛しいと思ってくれる人がもう一人傍らにいるということが、最大の安心に繋がったのだと思います。私がドゥーラさんにお願いしようと思ったのは、きっとそれだ。そして、その選択は大正解だった!と思います。

産後にあきこさんに自宅に来ていただいた時にずっと、カヤを抱っこしてくださって、 私の精神がすーっと安定したので、私たち夫婦以外にも新しい命を愛おしいと思ってくれる人が、他にもいるという事を知る事がこんなにも大切な事なのかと気付きました。

国立病院(NHS)の派遣助産師に出張してもらい、ドゥーラにも寄り添ってもらいながらホームバースできた事で、イギリスで同じ経験をした家族たちとつながる機会がたくさんできました。その人達の育児感や人生観から良い影響を受けつつ、より私らしい子育てができるようになってきたという感じです。夫婦の絆も産後はより強い絆になっていると良いのですが(笑)。家族の一体感は本当に増しました、一体感、強く感じています。3人だった家の中に人間が1人増えて、まだこんなに小さいのに存在感が大きく、調和がとれたという感じです。

あきこさんがよくおっしゃっていたイメージする事、これも今まで以上に意識するようになって、とっても楽にいられています。いろいろと教えて下さり本当にどうもありがとうございました。海外に住んでいるからか、自分の居場所、帰る場所という事を考えると、いつも不安定になっていたのですが、今回のお産を通してそのイメージがとても良い方向に大きく傾いた事もとても良かった事です。

あきこさんに来てもらって、命のこんなにすぐ側に寄り添うお仕事に本当に感動して、命のすぐ側のお仕事ができたらどんなに素晴らしいんだろうと思いました。教えて頂いた終末期に寄り添うpalliative doulaもどんなお仕事なのか、調べてみたところ、深く共感しました。ドゥーラは何も特別な言葉がいらないほど、誕生期そして終末期にとって自然な存在に私は思いました。出産の時だけではなく、人生のいろんな場面にそういう存在の人と過ごせたらなと思いました。

ドゥーラを知らない人に説明するのは本当に難しいです。産後、よく聞かれたのですが、どんな説明をしてもいつも相手にあまり伝わりませんでした。で、『「おうかちゃんっ!がんばれ!エイエイオー!」って出産中ずっと手をつないで、くじけそうな時も片時も離れずに側にいて応援してくれる人だよ』と説明するように変えたら、とたんに伝わり出しました。すいません。。。なかなか良い言葉がみつからず、とっても長文になってしまいました。

出産の日はあきこさんと写真を撮ってなかった。。。と思っていたら、撮ってくれてたんですね!嬉しいです!!!写真を見てあんなに早く、穏やかだったと思っていた出産もやっぱり壮絶だったんだなーと思いました。キアノは最初の方は赤ちゃん返り、新生児への嫉妬で大変でしたが、今ではすっかりお世話もしてくれて、自慢の弟をいろんな人に自慢して回っていまーす。ひと安心です。

私はマーケットのお仕事に戻る準備で初めて昨日、搾乳を試してみたのですが全くうまくいかず、ボトルを嫌がる子で、あらためておっぱいの神秘に感動しております。。。

最近の写真を送ります、成長したカヤを見てあげてください。寒くなってきたのでお体大切にお過ごし下さい。またお会いできるのを楽しみにしています!子どもたちを連れてまたいつか必ず遊びに行かせてください。 おうか』

元気そうな文面でホッとすると同時に、葛藤しながら搾乳している彼女の姿が思い浮かばれ、『今頃はおっぱい大丈夫かなぁ』と気がもんでしまいます。こうなると、もうおせっかいな親戚のおばちゃんレベルですよね。でもそれって実は、とってもすごいことだと思うのです。

私は外国でドゥーラとして女性をサポートさせて頂き、同時に、自分自身もたくさんの方々に日々支えられているという関係性の中で生かされています。さらにおまけで、世界中に愛おしい親戚家族がいっぱいできているんだ~!と想うと、ひたすらに有難い気持ちになります。

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<お産はいつも特別な聖地。ドゥーラはシャーマンかな?>

‘あきこさんに助けられました’、なんてお言葉を頂くと、いつもこそばゆくて「逆です~それは他でもない、この私の方です!」とひたすらに返すばかりです。先日も5人くらいお母さん方が集まり、子産み子育てのよもやま話をしていたのですが、「こんな風にママたちが集まると、ハッキリ言って言葉なんて要らない境地があるよね~。みんな同じように惨めな気持ちになったり、自分を責めたり、疲労で気を失いそうになったり。誰しも同じ道を通ってきている戦友だー!みたいな」と深い一体感と共に全員が深く頷き合いました。いつも感じることだけれど、つい先日だったので、今、鮮明にその瞬間の女性たちとのワンネスの感覚が残っています。

ドゥーラって、結局は地域のお母さんだから、どこまでいってもピアな関係なんですよね。お産という人類共通の記憶をベースに、女性同士が瞳を合わせる時に、お互いのエネルギーが根元的に交流しあって、私たちは究極的にひと繋がりの存在だと体感する。それがとても心地良くて、祈りのように尊くて、だからドゥーラを続けているんだろうなぁと思います。

まるでチベット仏教の砂絵曼陀羅のような私の短いドゥーラ人生。砂を使って地面に描く美しいパターンのように、新しい土地で新しい絵柄をつむぎ、夫の転勤を告げられたら、過去にこだわらずに一気にさぁ~っと手放して、次の土地へと旅立つ。行った先では休業したり、軌道に乗るのにフランスのように1年もかかる。でも、さまざまな意味でそれまでの成功や執着を断ち、自分の欲から自分を解放させるための修行&恩恵に満ちた経験でした。
そうそう、もうひとつ大事なことがありました。パリに来て最初の頃に産後ドゥーラで伺ったお宅は、お母さまが二人目を産んだばかりで産後の肥立ちがまだ心配される頃でした。上のお子さんも小さくて大変な時に、御主人は出張ばかりということで、乳腺炎になりかけていた彼女が私を呼んだのです。張ったおっぱいをゆるませる方法や、添い乳の姿勢、血流量をアップさせてくれるエクササイズ、足腰をあたためる食事&環境づくりなど、相手の質問に答えながらたっぷりおしゃべりをしました。その方とつい先日数カ月ぶりに会ったら、とても元気そうで、パリでのお友達をどんどん増やしながら駐在生活を満喫されていました。こんな表情をする女性だったんだ!と驚くほど瞳のキラキラ輝く彼女を抱きしめながら私までワクワクしてきました。

ドゥーラとして関わったお母さま方からメールや手紙をもらうことは究極の幸せだけれど、やっぱり実際に会ってハグできるのが最高です。成長して太くなった赤ちゃんの腕に触れながら、「すっかり元気そうで良かった!」と母子のぬくもりを感じられるのがドゥーラをしていて一番の報酬です。もちろん、すべての方々と直接逢えないからこそ、冒頭にも書いた通り、インターネットがその部分を着実に補ってくれてはいるのだけれど。。。

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<私の好きなこと。直接ハグして、お互いをライブで労うこと>

つれづれに書いているので、行きつ戻りつの内容ですが、とどのつまり今回のブログで伝えたかったことは、もしあなたに会いたい人がいて、でも直ぐには会えないなら、メールや電話で勇気を出してみてくださいということと、もし直接会えるなら、少しでも時間を創出して、10分でもいいからライブで会ってきてほしい、という2点なんだと思います。じかに交流するエネルギーは、メタモルフォースの源泉。想像をはるかに超えた力がありますよね。
引っ越しや人との別離は、インターネットの普及のおかげで、今やそれほどハードルの高いことではなくなってきているけれど、それでも逆に今のような時代こそ、実際に会って交流し合うことの価値は計り知れないものになったとひしひし感じます。

‘今のここ’を大切に、ますますこころとからだに優しいお産がこの世に増えていきますように。。。

最後にこちらでもこの夏の3回のお話会のお知らせを再度シェアさせて頂きます。7/12(木)、7/30(月)、8/7(火)のいずれかでメルマガをとってくださっている方々と実際にお目にかかることができたらとても嬉しいです。もしいらっしゃれる方は会場でぜひ声をかけて下さい。

【お産道場 お産の寄り添い「人として大切にされるお産とは」を考える】
日時2018年7月30日(月) 19:00~21:00 18:30開場 終了後22時までフリータイム
会場 NPO法人Umiのいえ  http://www.uminoie.org/
参加費 3500円+税  (お夜食におむすびをご用意しております。)
ゲスト 木村章鼓
お申し込みはこちら: https://coubic.com/uminoie/150119

【 世界に広がるドゥーラの輪〜ドゥーラからの国際便〜 】
日時 : 2018年 7月12日 (木曜日)
9:00より受付開始 終了12:00
場所: 都内
会費 : 4000円  (お茶&お菓子付き 先着 30名)
託児はありませんが、お子様連れ大歓迎です!
申し込み方法:
こちらまでメールをお願いします。
doulashipjapan(@)gmail.com
(@)を@に変えて送ってください。お申し込みをしてくださった方に詳しい場所、スケジュール、お支払い方法など送ります。ドゥーラシップジャパンhp
https://www.facebook.com/events/2144434235785374/permalink/2144439339118197/

【 慶應義塾大学 公開講座 <患者学> ゲスト講演 木村章鼓 】
日時 : 2018年 8月7日 (火曜日)
時間:18:00
場所: 慶應義塾大学 信濃町キャンパス考養舎
参加費 無料
申し込み不要

長い文章を最後までお読みくださりいつも有難うございます。

木村章鼓

あるお母様から頂いた感想 ~ドゥーラケアについて~」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 女性性の原風景 | Nomadoula Wellness in Paris

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