お産は私にとって、広大無辺な宇宙の営みに自分を重ねて、最終的には宇宙そのものとひとつになっていくような、深く大きな体験だった。
その妊娠が分かってからの変容ぶりを間近で追って下さっていたお方がいる。
彼女の話を抜きにしては今の自分を語れない。
まさに天の引き合わせとしか言いようがない、私にとっては。
よしみさんとおっしゃるその素敵な女性は、私が妊娠する前に、まだ数々の仕事をかけもちしていた当時、私のイタリア語教室に来て下さっていた生徒さんのお一人であった。
ダンテの「神曲」を原書で読めるようになりたいんです。
そう彼女はご自身の目標を語った。
イタリア語教室と言っても、初心者向けで、「神曲」なんて私でさえ原文を理解し得ないだろう。
どうしよう、、、凄い生徒さんが来てしまった!
と思っていたが、よしみさんはとても朗らかで、私の稚拙な教え方にも嫌な顔一つ見せずに通って下さっていた。
彼女との時間を重ねていくうちに分かったのは、よしみさん自身が教員であり、3つの大学の英文学の非常勤講師として忙しく教えている、ということであった。
どおりで知性溢れる女性なわけだ。。。と私はすごく納得した。
その後、私がエジンバラに移動することに決まると、よしみさんは、ご自宅で私のために送別会を開いて下さった。
今思い出しても、涙が出るほどありがたい。。。
とても素敵なご自宅で、その広いリビングに椅子をたくさん並べて、よしみさんのお知り合いの方々もいらしていて、なんとも本格的なカレーの香りが漂っていた。
忘れもしないその席で、私はよしみさんから、
「エジンバラへいくなら大学院へ進めるじゃない。いい大学ですよ」
と言われたのだ。
よしみさんは本気ではなかったかもしれない。
励ますために軽い気持ちで言って下さったのかもしれない。
社会人で幼児を抱えて大学院へ行くことは考えていなかったので、私は一瞬どきっとした
が、
いや、待てよ。
と感じた。
なぜなら、例の直感がピロロロ〜とまた私の内側に鳴り響いたからだ。
ひょっとしていけるかも、その道!
と手応えを感じる。
なんとなくドキドキして、
心の底からワクワクしてきた。
早速、エジンバラ大学について調べてみると、当時はまだ出来立ての学部・学科であったが、医療人類学(Medical Anthropology)と呼ばれるものが目にとまった。
その後に正式名称はHealingand Illness (癒しと病理)というサブネームが付けられた進化中の学科だったが、さらに内容を確認してみたら!
パブリックヘルスや、助産の人類学、生殖医療の倫理観、死に寄り添う人類学、などと、まさに自分が勉強したいものばかりではないか!
でも、大学時代の成績表と、教授2名からの英語の推薦状が無いと願書を出せないというので、慌てて成績表を取り寄せ、教授にもお願いをする。
行動すると決めると、早い!
でも、私はひどい成績の学生だったので、どなたにお願いしようか、と悩んだ。
幸いにも、お一人目にお声をかけた佐々木研一教授が即座に快諾してくださり、長文のレターを書いて下さった。
成績が悪くても性格が真面目なので、今思うと、先生方も見守ってあげたいと思う生徒だったのかもしれない。
もう今振り返っても、あんなに短期間に私のために英文を作成してくださり、佐々木先生には本当に感謝の言葉しかない・・・
もうお一方は、なんと!よしみさんのご主人様が書いて下さった。
ご自宅での送別会で一度しかお会いしていないというのに、いろいろと相談に乗ってくださり、そういうことであるならば特別にと私の熱意を汲んで頂き、英文での推薦状を急いで用意して下さったのである。
実は、このご主人様こそ!
死の人類学 (講談社学術文庫)などたくさんの本を書かれ紫綬褒章を叙勲されている
山下晋司先生であった。
彼こそ、東京大学大学院総合文化研究科名誉教授であり日本を代表する文化人類学者だったのだ。
なんという巡り合わせ。
人生とは、予想外の連続である。
イタリア語の生徒さんであったよしみさんのご主人様の丁寧な推薦状と、母校の先生の「自信を持ってこの生徒を勧めます」と盛り盛りのて〜んこ盛りにして書いて下さった推薦状(英文だけ読むと私でなく別人のよう笑)を受け取ると、成績表と合わせ、大急ぎで郵便局からエジンバラ大学の大学院へ送った。
娘には、受かってから言おうと思っていた。
でも、書類を提出すると気が緩んで、結果がどうであってもいいよいいよ。
渡英まえに出来るだけのことはしたんだから。
と思い、娘にも「おかあさんね、おべんきょうしたいことがあるの」
と伝えた。
すると「おかーさんがんばって〜」
と笑顔で言われただけだったが、その一言が凄くパワフルで、なんだかとっても元気がでてきた。
しかし、、、試練は待っていた。
→次号に続く
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