第17回 この人に逢いたかった〜

大学院の生活がアップアップなのに、私ときたらどこまで貪欲なのだろう。

でも、逢いたい方には逢っておきたい❤️

しかも、

かえって両方同時に進めることで学業がはかどるだろうと思い、30年以上ホームバースの利点について語ってきたナディーン・エドワード博士の元を娘を連れた。

予想通りの素晴らしい女性だった。

もう感激し過ぎて、私は首振りべこ状態であった。

そして、彼女の主宰する産前産後教育者の2年間コースに申し込んだのだった。

月に2回、土日丸2日の内容で、子連れでも通えるという。

エドワーズ博士は、お産の世界で有名なAIMS(お産における医療消費者センターのような組織)の創始者のお一人だが、現在、エジンバラ市内でBRC(バース・リソース・センター、その後、名称はPPCに変更)という施設を運営している。

妊娠した女性や、赤ちゃんを抱えたおかあさんたちが産前産後クラスに通うスクールのようなところで、彼女の長年の活動内容に私はこころから共感した。

そこで、教育者も養成しようということで、SBTA(スコティッシュ バースティーチャーズ アソシエーション)を主宰していたのだ。

ナディーン・エドワード博士の話

赤いチェックのストール

窓辺から見える木の根本に赤いチェックのストールが落ちている。

なんとなく秋の気配を感じて心が静まる。

日本からの来客を快く出迎えてくださったエドワーズ博士。

エルダリーフラワーのハーブティーを入れてくださった。

『産みゆく女性が、妊娠、出産、育児を通して、自分のこととして起こるひとつひとつの出来事の意味をていねいに考え、本当の意味で、物事を主体的に判断していくプロセスで、真の自分と出遭っていけるようサポートする』

というのは、口で言うほど簡単なことではない、とお茶をすすりながら語る。

『こころと身体のつながりはとても大切です』

という部分に力を込めて、私をじっと見つめた。

つい先月、ご自身のお嬢さんのホームバースに付き添ったばかりというエドワード博士は続けた。

『今まで、数えきれないほど多くの女性たちの声を聴いてきましたけど、お産とは身体的、精神的であるばかりか、特にその人のスピリチュアリティーに大きく影響を与えるものです。

お産は、特にホームバースは、ルーティンケアや不必要な医療介入から身を守り、一対一のケアを受けられるという点で、産む女性の自律性を高める可能性に満ちています。

豊かな自律性を生むお産とは、自律的な助産師の存在によって決まっていくものです』と、とうとうと語るエドワーズ博士。

自律性—-肉体的、精神的、霊的な気づきまでも

この自律性というのが興味深い。単に肉体レベルの話ではなく、人生を豊かに生きていくうえでの必要な判断力、決断力を高めたり、霊的な気づきまでをも含んでいるというからだ。

どうやらここスコットランドでは、ただの『お産好き』だった私のような者にとって、想像以上にいろいろなことを学ぶ機会がありそうだ。

今の私の英語レベルでは正直きついが、エドワード博士おすすめの専門書も原書でいろいろと読んでいければなぁと思っている。

えっ?日本語の本ばかり読んでいるうちはダメって?

ハイそのとおり(涙)

冒頭にも書いたとおり、今は院の課題図書以外はまだ日本語の本ばかり手にとってしまうけど、出来るだけ英語の文献は原書で読むようにしなければなーと思う。

現状では、英文読解だけでアップアップで、行間を読み取ったり、読後感に浸る余裕は全然ないけど。。。

目下の目標は、英語の本を読んでも『自分らしさ』に水をやったような清々しい気分になれること、かな。

それにしても、奥がふか〜い道に踏み出してしまったものだ。

→次号に続く

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第16回 入学後に待っていた試練

晴れて大学院生になりましたーっ

とにこやかだったのは、ほんの数日だった。

いきなりイギリス人の医師(GP)とドイツ人の先生に課題図書を山ほど与えられた。

大学が誇る24時間オープンの図書館へのアクセスカードも作ってもらう。

同じクラスメートはみんなものすごく優秀。

私一人、初日から落ちこぼれ。

そんな気分でスタートを切った。

私は一番の年上で、先生方を覗いて、唯一の子育て真っ最中の母親だった。

でも、エジンバラは大学都市である。

学内のナーサリーを数カ所(数カ所もあるのがすでに凄い!)見学に行ったところ、たくさんの学生が赤ちゃんを預けていると聞いて、心底驚いた。

結局はシュタイナースクールを選んだので、大学内の保育園は利用しなかったが、学生の子供達も教授達の子供達も楽しそうに過ごしていて、なかなか良さそうなナーサリーだった。

毎日、娘が眠ると、どろどろに疲れたカラダに鞭を打って起き出して課題論文を読んだ。

分からないことだらけで、電子辞書を使って調べる。

かちゃかちゃと打ち込む音やパソコンの音でたまに娘が起き出してくる。

授乳を続けていたので、夜中に一回、2時くらいにたっぷり飲ませて、再び寝かしつける。

学べるということがとにかく楽しくて、寝不足が当たり前の生活だった。

なぜ更年期障害を訴える女性のいなかったとある地域で、急に更年期障害(メノポーズ)で薬に頼る人口が急増したか理由を探ってみたら、その数年前から、製薬会社がメノポーズの専門薬を開発し、その地域に売り込み開拓の手が入っていたからだった、とかいう論文だったり、ネパールでの結核患者の推移と製薬会社の新薬開発が複雑に絡み合っている事実であったり。

オックフフォードの医学部の学生達を相手に行った研究では、最初のうちは、切ったり貼ったりすることに抵抗のある新入生達が、一体入学からどのくらいの時間たった頃に、人のカラダを単なる人体として処理できるようになっていくのかという推移の研究だったり。

はっきり言って、医療人類学とは、恩恵として近代医療をとらえつつも、同時に、厳しい視点で医療の在り方を批判し、本来のウェルビーング(健康な在り方)を模索する学問だなあと思った。

しかも、その学問を教えている当人が医師達なのだから面白い。

そんな内部告発のような世界の研究の数々をみんなで読んでディスカッションをしていく。

私は英語ができないからディスカッションが弱い。

でも、幸いにもイギリス人の女性のマーズランド先生(アフリカ研究をされていた)が娘と同い年の男の子のママだった。

ディスカッションでは、彼女が私をよくフォローして支えてくれた。

休日には自宅に呼んでくれて、子供達を遊ばせながら、私の理解できていなかった部分を丁寧にフォローアップまでしてくれた。

彼女が私の熱意に深く共感してくれていたのは痛いほど感じていた。

同じ母親として付き合っても下さる。

本当にありがたい存在だった。

だから、卒論の準備など、頑張ろうと思う時には、いつもマーズランド先生に相談をして決めていった。

出産の在り方は、未来をつくる。

だから、あなたが頑張っていることはすごく大事なこと!

イギリスの旧家に育った彼女の上品なブリティッシュアクセントが今も耳の奥に残る。

→次号に続く

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第15回 試験と時空間のお助け

ワンチャンスのIELTSの試験日、いつもと全く変わらない自分を装って、娘にピンク色のカーディガンを羽織らせてナーサリーへ。

預ける間際、いつもの通りに抱きしめたら、ぎゅ〜っと強く抱きしめてきた。

うおおお〜〜〜元気でる〜〜〜

いきなりの外国暮らしでも、子供の方がやっぱり順応性があって、娘はいきなり週3回のナーサリー生活(英語学校が週3回だったので)でも、一体誰に似たのかと思うほど愛嬌を振りまいて保育士さん達に可愛がられていた。

預ける時は、じゃあね〜と抱きしめたくても、さ〜っとおままごとの方へ行ってしまうので、まともに抱っこできなかったから、抱きしめられて母親の方が嬉しくなる。

母、頑張ってくる〜!!!!!

スプリングコートの襟を立て、足早に同じ道の端にある英会話学校まで行く。

そして、試験が始まるまでの一時間ほどはスピーキングテストの時事問題用に朝のニュースを読んだり、これまでに間違えた英単語を見返して過ごした。

自動販売機でホットココアを買うが、指先が緊張で震えてきてお腹が痛い。

痛いんだよっ!

情けないな〜もう。

と落ち込んでいたら、韓国人学生の女の子が、大丈夫?頑張ろうね!と声をかけてくれた。

私よりもずっと若いのに、堂々としていて偉いなあと思ったし、ありがたいというか、ただもう、この子が良い点数を取れますように、、、と願っていた。

願うことで、かなり緊張が溶けて楽になった。

自分のことでいっぱいいっぱいになっているより、誰かのために願う方がずっといいや!とこんな状況の中であらためて実感した。

余談だが、この英会話学校にはアジア人の学生が8割くらいと多く、中でも韓国人が多かった。

その彼女もすごく英語が上手で、韓国の英語教育や受験戦争がしのばれた。

リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングと4種類の試験が全部終わるのに4時間ほどかかる。

こんな始まりで、4時間後の私はどうなっているのか、、、と思ったが、始まってしまうと、通常のクラスで使っている教室なのが幸いして、不思議なくらい気持ちが落ち着きを取り戻し、いつものクラスと同じ感覚で試験を受けられた。

空間の持つ力というか、アドバンテージとなってみて、あらためて時空間の大きさを思い知らされた。

これはお産にも似ていると思う。自分の住み慣れた空間。いつもの匂い、いつもの天井、いつもの壁。そのスペースの力を借りて、自分の力をマックスに発揮できたと思う。

思った。

だが、

結果は、

果たして、、、6.0であった。

あああああ付け焼き刃ではやはりダメだったか〜。

と落ち込むが、ダメ元で、大学院の教務課に直談判しに行くことにした。

自宅からバスで1回乗り換えて、歩きも含めてトータル30分ほどの場所にあるエジンバラ大学大学院。

事務の女性はとても優しかった。

推薦状のコピーや願書のコピーなども全て見た後で、

「そうなのね。6.0は惜しかったわね。

新学期が始まってしまうけれど、次のIELTSの試験日はいつ?」

私が日にちを答えると、

「あら、そう。2週間ほど締め切り日を過ぎてしまうけれど、待ちますよ。6.0取れているなら、見通しが明るいから、10月頭までなら多めにみます」

と言ってくれたのだ。

良かった〜!!!!

行ってみて良かった〜!!!!

その場で、とりあえず入学が決まっのだ。

諦めないで、ドアは自分から叩きに行かなくてはダメだな、と思った。

後からわかったことだが、私のような滑り込みのケースも毎年あるらしい。

ノウハウみたいなことを全く何も知らないで、一切の情報をもたずに現地入りした私でも、最終的にはなんとかなったのだ!

これで、勉強ができる〜!!!!

帰宅した私がキッチンで小躍りしたことは言うまでもない。

何せ、IELTSの試験までは真夜中に起き出しては、写真のように勉強机に向かってひたすら勉強しまくっていたのだから。

その晩は家族3人でささやかにジンジャエールでお祝いをした。

もう、ショウガの味、苦くない。

そう私は感じていた。。。

→次号に続く

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